知能機械工学科 通機会共催 特別講演会

題目:「障害者・高齢者に使いやすい情報技術」 −情報アクセシビリティーの確保−

講師:日本アイ・ビー・エム(株) 瀧澤 正和 (昭和56年卒業)

開催日:平成14年12月2日(月)


近年、インターネットを始めとしたIT(情報化技術)は急速に発展しており、 社会生活に大きな変革をもたらしつつあります。このITによるメリットは、 万人に等しくもたらされなければなりません。 恩恵を享受できる層とできない層の分極化を避けるための英知が、 今も求められています。そこで、本日は、情報弱者と呼ばれている障害者や 高齢者に使いやすい情報技術についてご紹介します。

最初に「情報アクセシビリティー」について「Webアクセシビリティー」 を例としてご説明します。絵や写真を多用したとてもカラフルで視覚に訴えた Webページが多数あります。晴眼者(視覚に障害を持っていない人)は、 画面上の文字、絵そして写真を見て理解できますが、視覚障害者は、 画面上の情報を見て理解することは困難です。そこで、 「スクリーン・リーダー」という画面の文字情報を音声で読上げる ソフトウェアを使用します。しかし、絵や写真といった画像は、 スクリーン・リーダーがその内容を自動的に判断し、 読上げるということはできません。絵や写真にAlt Tag (代替テキスト) が付いていれば、スクリーン・リーダーは、その代替テキストを読上げますが、 もし代替テキストがなければ、それらについての情報は読上げないので、 晴眼者には伝わる情報が視覚障害者には欠落してしまいます。また、 視覚障害者や一部の高齢者はマウスポインターの位置を視覚的に 理解するのが困難です。 マウスに頼らずにキーボードの操作だけで使用したいアプリケーションの 操作ができる必要があります。以上のように、「Webアクセシビリティー」 とは、画面の文字情報は音声に変えられるか、 アプリケーションはマウスに頼らずにキーボードだけで操作できるのか、 といった質問にYesと答えられるということです。

晴眼者の見るホームページ 視覚障害者の見るホームページ

今、視覚障害を例に「Webアクセシビリティー」について説明しましたが、 視覚障害以外にも様々な障害がありますので、 それぞれの障害の特性に応じた対応を行う必要があります。例えば、 聴覚障害者は、PCから発生する「音」を理解するのが困難ですので、 警告音の換わりに画面を点滅させたり、動画には字幕(キャプション) を付けたりする必要があります。また、肢体不自由者(上肢障害者)は、 指や手の動きに制限がありますので、 その制限を補う様なキーボードやキー操作の設定が必要です。

次に、障害者と高齢者の人口比率を見てみたいと思います。 日本の身体障害者数(18才以上)の人口は平成13年版の障害者白書 (内閣府編)によれば、2,933千人であり、日本の総人口の約2.4%です。 高齢者化社会という言葉が示すように、 日本では65歳以上の高齢者の全人口に占める割合は、今から20年前には、 約10%であったものが、今から20年後には、約25%となると予想されています。

2001年に「e-Japan構想」を打ち出した日本は、 5年以内に世界最先端のIT国家になることを目指しています。 そして生活に必要な情報の多くがインターネットで提供される社会に なりつつあります。障害者や高齢者もこれらの情報に等しく アクセスできるような配慮が今から必要です。

米国においては、情報アクセシビリティーを確保するための法律として、 2001年6月から「合衆国リハビリテーション法508条」が施行されました。 この法律は、電子・情報技術の連邦調達を、障害を持つ連邦職員 およびそのテクノロジーを使う必要のある障害者にとってアクセス可能な ものとすることを求めています。

日本においては、障害者や高齢者も使いやすいユニバーサルデザインの 機器開発に向けたガイドラインのJIS規格化を平成15年度までに行うことを 計画しています。

アクセシビリティーを確保した電子機器やWeb Siteをどのように 作成したらよいかについての指針は幾つか公開されています。 日本IBMのガイドラインは、次のURLから参照できます。 http://www.ibm.com/jp/accessibility/guideline/index.html

最後になりましたが、アクセシビリティーを保障し、 だれもが使いやすい機器を設計し、 社会に貢献することがこれからの機械設計エンジニアに 求められる姿と思います。

講演の様子
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Last updated on November 17, 2003 by www-admin@tsukikai.mce.uec.ac.jp